「うわっ」
馬車が目の前をガラガラと音を立てて横切る。 思わず後ろに退いたが、ヒュホラの姿が馬車の向こう側に消えてしまった。
直後、炎がヒュホラと三人を隔てる。
「ヒュホラさんっ」
シスヤは炎に向かって名を叫ぶ。
「いいか、ここから早く逃げろっ」
炎の向こう側からヒュホラの声が聞こえた。
「絶対生き延びろっ」
「ヒュホラさんっ」
ぐっと、クイントはシスヤの手を握った。
「クイント、ヒュホラさんはっ」
「大丈夫だ。ヒュホラさんなら、きっと大丈夫だからっ」
ぐいとシスヤの腕を引く。
「行こう」
三人は首都に向かって走り出した。
いまさら首都に向かっても何もないのに。
それでも三人は当初の目的を果たすべく首都――いや、もと首都であった都市跡へと向かうのだった。
全てを燃やし尽くした炎が消えたのは、それから三日後のことだった。
クイントたちはヒュホラに言われた通り、首都へ向かったものの、やはりヒュホラのことが気になり、首都まで行かずに、宿場街へと戻って来た。
「──」
呆然と三人は目の前の景色を見つめた。
そこには信じられぬ光景が広がっていた。
全てのものがなくなっていた。
街も、村も。何もかもが元の姿を失っていた。
人の姿も見えない。
残っているのは、瓦礫の山、そして焼け崩れた家々──。
一体、何だったんだ。あの時起こったことは一体何だったんだ?
激しい震動、地響き、そして光…。
首都を襲ったとヒュホラが言ったものと同じもの──。
──この国はやがて滅びる──
岩山で出会った老人が告げたことがクイントの心を駆け抜けた。
あの老人の言った通りのこととなってしまった…。
「こんな…」
──人が犯した罪は許されるものではない。やがて報いはくる──
老人の言った言葉が事実だとしたら。その言葉のままの意味だとしたら。
あの光は、震動は──
(おれたち自身の心のうち…?)
自分の幸せを奪った相手への憎しみ。
全てを壊してやる。すべてを燃やし、この世から消してやる。自分の大切な物を壊したもの全てを。
クイントは目を伏せる。
何のために、おれたちは戦を続けた。
豊かな国を築くため?よりよい生活をするため?
こんな結果を望んで、おれたちは戦い続けたんじゃない。
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