クイントは一瞬ぎくりとした。思わず、服の上からそれを握りしめる。
「よく分かったなあ」
タキトは知っている。クイントの首からかけられているものを。アネットがこの世をさってから、片時も身から放すことのない、アネットの形見を。
だが、この初対面の老人はそんなことは知らない。服の下に置かれているそれを。
しかし、クイントが内心ぎくりとした理由は別にある。「どこに行く?」と尋ねられた答えが、アネットのロケットにあるのだ。それを老人は見抜いている?
クイントは震える手で、ロケットを取り出した。
そうして、黙ったまま老人に差し出した。
「ほう……」
ロケットを開けた老人は思わず感嘆の声を漏らした。
「これは……緑の国、だのう」
「……」
「幻の国と言われているリクウェア。お前さんはここに行くのだね」
「行くのかね」ではなく、老人は「行くのだね」と言い切った。
それを聞いて、タキトとシスヤが声を失った。クイントに信じられぬ、といった視線を向ける。
今まで、そんなことをクイントが口にしたことはなかった。
だが、老人にそう言われても、クイントは反論一つしない。ただ黙って老人を見つめている。
「クイント?お前……」
「どこにある?」
クイントは老人の言葉を肯定する代わりに、老人に問うた。
タキトは溜め息をつく。
「お前、リクウェアなんて、あるかどうかも分かりはしない国なんだぞ。そんなところを探しても無駄……」
「いや……リクウェアはある」
老人は静かに告げた。
「どこだ?どこにある?」
クイントは身を乗り出す。
「行きたいか?リクウェアに」
「おれは行かなくてはならないんだ。一生かかっても、どんなに遠くても。おれは約束したんだ。必ずリクウェアに行くと」
「クイント…」
タキトは目を見張った。
こんな想いを友が抱いていたとは…。こんなにも激しい想いがクイントの内にあったとは──。
「知っているなら、教えてくれ。リクウェアはどこにある?」
「──この国はやがて滅びる…」
老人はクイントの問いには答えない。代わりに驚くべき言葉を口にした。
「滅びる?」
ぶっそうなことを、とタキトは眉をひそめる。
「そんなこと、あるわけないじゃないか」 |