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ヒュホラの真剣な眼差しに、クイントは頷いた。この人なら大丈夫、そんな気がしたのである。
まず、シスヤが口を開いた。
物心着く前に、反中央軍にさらわれ、そこで育ったこと。銃を与えられ、人を殺す術を教わったこと。そして、沢山の人を殺したこと。それが正義だと信じていたあのころの自分。だけど、大きくなるにつれて、家族という言葉が心の中で大きくなっていった。故郷にどうしても帰りたくなった。一度でいい、家族に会いたい。自分がどんなところで生まれて、どんな家族に囲まれていたのか。遂に軍を抜け出す。
その先で、出会ったアネットたち。そして知った人の温かさ。
だけど、それも束の間の夢だった。全ては失われてしまった。アネットも、そしてニシアももうこの世にはいない。自分に係わったせいで。
嗚咽を上げながら、それでもシスヤは話しつづける。
会いたかった。ただそれだけ。だけど、天はそれを許してくれなかった。自分のたった一つの願いも神様は叶えてくれなかった。そして、やっと手に入れた小さな幸せも天は自分から奪っていった──。
そうか、そうかと言って、ヒュホラは大きな手でシスヤの頭をなでた。
「お前さんは?」
「──親父は戦で死んだ。お袋は…病気で死んだ…」
タキトは辛くなって、顔を伏せた。シスヤにつられて涙がこみ上げてくる。
「おれは…何も…できなかった…。おれは幼すぎてっ、おれはっ…」
言葉がつまる。
横にいたクイントが優しく肩に手を置く。
ふとクイントとヒュホラの視線が合う。クイントはヒュホラから視線を外さずに、真っ直ぐにヒュホラを見つめたまま言った。
「おれの父親は戦で死んだ。母親は殺された」
「──右目はどうした…?」
傷ついたクイントの右目。あの日、ガラスの破片が刺さった右目は、もう見えない。元々前髪は長かったので、それで分からぬよう隠しているつもりではあった。
クイントはうずく右目を、そっと右手で抑え、あの日のことを話した。
淡々と語るクイントをヒュホラは悲しそうに見つめている。
「お前さんは──泣かないのか…?」
話し終えたクイントから視線をそらさずに、ヒュホラは静かにたずねた。
「辛いな…泣けないのは一番辛いな…」
「──ヒュホラさんは?ヒュホラさんはどうして、ここにいるんです?」
一瞬の沈黙の後、話を変えるように、クイントは問うた。
「おれ?」
それまでとは打って変わったように、元の調子に戻ってにっと笑う。
「おれはな、軍に入隊するふりをしてな、武器を盗んでは脱走して、それを売っぱらってたんだ。結構金になるんだぞ、武器ってのは。特に銃はすごい。あれは民間の人間には手の届かないものだろう。だから、余計高い値がつく。だがな、さすがにそれを繰り返しているうちにどうにもならなくなっちまってなあ。今や軍に追われているってわけだ」
三人は呆れて言う言葉もない。
「全くわれながらすごいことをしたもんだと、感心するよ」
涙を流していた二人も、ヒュホラの言葉に思わず笑いがこみ上げてきた。ぷっと笑いだす。
「お、できたできたっと」
ヒュホラは鍋にパラパラと調味料を入れると、一人分ずつ器によそってくれた。
決して豪華とは言えない食事。だが、心の奥まで温められていく。
自分たちはまだ幸せなのかもしれない、そんな気がクイントにはしていた。
どんなに辛いことがあっても、自分たちはまだこうして生きていられる。仲間と共に。これは、決して不幸なことではないだろう…。 |