村人はクイントの視線に気づき、「どうする」と目で尋ねる。
「とりあえず、こいつの件に関しては任せてもらえますか?」
「──大丈夫か?」
「さあ?」
クイントのすっとぼけたような返事に、緊張が高まっていた村人たちに安堵の息が漏れた。
「おまえに任せるよ」
「どうも」
「おまえなら心配はいるまい」
「そうですかね」
村人たちはクイントが無愛想ながらも、子供たちに慕われている理由をきちんと知っていた。
彼は決して不実な行為を許さず、誰に対しても平等に振る舞う。
そんなクイントにみなが一目置いていた。
クイントのそのような性格は、十年前の戦で死んだ父親にそっくりだと母はいう。
クイント自身、父親がどんな人であったかは覚えてはいないが、そう周りの者に言われるたびに、自分の中に父親を感じるような気持ちになった。
「さてと……」
村人たちが去っていった中で、クイントは少年の腕をぎゅっと掴んだ。
「どうするの?」
アネットが松葉杖をつきながら、近づく。
「さてね」
「──殺すつもりか?」
タキトは少年の頭をつついた。
少年の肩がびくっとその言葉に反応する。がたがたと震えているのが、クイントにも分かった。
(そうだよな……。こいつだって死ぬのは怖いんだ。まだ、こいつはおれより幼いんだからな)
クイントはアネットのほうに意見を求める。
「どうする?」
「そうね……」
アネットはにっこり微笑みながら、少年の顔を覗き込んだ。
「悪いことをした罰に──お夕食は抜きね」
「夕食か……そりゃきついぜ」
タキトがおどけてみせる。
少年はあっけにとられ、ぽかんと口を開けていたが、急に暴れ出した。
「ふざけんな!殺すならさっさと殺せっ!こんなところにいられるかっ」
少年が暴れた拍子に、少年の正面にいたアネットは体制を崩した。
「おっと」
タキトが危機一髪のところでアネットの身体を支える。
「なにをする」
ぼかっとクイントは軽く少年の頭に拳骨を落とした。
「仕方がないな、暴れんなら家に入れるわけにもいかないし……。お前、地下牢に放り込まれたいか?」
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