こちら側としてはただチャンスを狙って、その場に身を潜めているしかなかった。
(せめて銃さえあれば……)
そう思っていたとき、突如、背後で巨大な音が響きわたった。
「!」
クイントが振り返った直後、前方でドーンとこれまた大きな音がし、それを合図に次々と銃弾が自分たちを襲った。
(しまった!)
ちっと舌打ちをすると、横でガラッと瓦礫の崩れる音がした。
「ばかっ!立つんじゃない!」
クイントは思わず立ち上がった幼い少年に叫んだ。
少年はクイントの叱咤の声にはっとなって、あわてて身を伏せた。
銃弾は休む間もなく降り注ぐ。
「お前たちは、引けっ!」
背後から男の声がした。振り返ると銃を手にした三十近い男が腰を屈め、近寄ってくるところだった。
男はクイントの横に来ると、瓦礫の隙間から銃を撃ち放った。
「お前たちは帰れっ」
「でもっ」
クイントが反論しようとすると、男がギンとクイントを睨んだ。
「ここでお前たちが死んだら、残された者たちは誰が守るんだ。いいか、今ここを守り抜いたとしても、ここだけじゃないんだ。これからもお前たちの力が必要な時は山ほど来る。だから今は引け」
男はそこで表情を緩めた。
「大丈夫。そう簡単に死んでたまるか」
「──分かりました」
クイントは頷くしかなかった。
「行くぞっ」
クイントの声が響きわたる。
クイントの声に、周りに入る仲間たちは目で頷き合いながら、身を低くし、近くの地下道の入口である木の板を押し開けた。
「さっ、入れ!」
クイントは幼い者から順に中へ入れ、全員入ったところで最後に自分もその中へ身をすべりこませた。ちらりと先程の男を見やる。男はクイントの視線に気づいて、強く頷いた。クイントも頷く。そうして中へ入るときっちりと蓋を閉めた。
「ごめん。おれのせいだ」
クイントが入ってくるのを待っていた先ほどの少年がしょんぼりと俯いた。
「何いってんだ。さ、行くぞ」
クイントは微かに笑うと、幼い少年の肩をポンと叩く。
少年はその言葉に少しうれしそうに、顔を上げ、クイントの後に続いて走りだした。
この地下道の中に入ると、じめっとした湿気と、鼻をつくような嫌な悪臭に襲われる。
しかし、今は、そんなことに構ってはいられない。
クイントたちは、村に続く道をひたすら走りつづけた。
この地下道はまるで、迷路のように複雑に入り組んでいる。これは敵に自分たちの居所を知られないようにするためには、大変好都合なことであった。
慣れたもので、クイントたちは迷うことなく、一心に走りつづける。
と、先頭を行く者の足が止まった。辺りに敵が潜んでいないことを確かめる。
「よし、いこう」
クイントは、ここで自ら先頭に立つと、細く狭い脇道へと入る。やがて道は上にむかう階段で行き止まりとなった。
階段は上までは続いておらず、天井から一メートルほどのところでなくなっている。
クイントはその階段の最上階まで行く。真上にある石でできた板を用心深く、音をたてないように細心の注意を払いながら押し上げた。
始めは、二、三センチほど押し上げてみる。
周りには誰もいない。
「──大丈夫だ」
クイントは、ここで、思いっきり板を押し上げ、ひょいと外に出た。
「さ、手、出せよ」
そういって、一人ずつ上がってくるのを手伝った。
「全員無事だな?」
「なんとか……」
クイントと同じ年齢の少年タキトがフッと笑い、付け加えた。
「おれたちはな」
クイントはその言葉に口を閉ざした。 |