少年は少し笑って肩を竦めた。
「君は――」
「無理だよ、リクシュ。――これだからよそ者は…」
そいつの言葉を遮って、村人が口にした言葉を、おれは聞き逃さなかった。
『余所者』――その言葉におれは強すぎるくらい反応した。
「なんだと…」
おれの内側から怒りがこみ上げてくる。
「おれだって好きでこんなとこ来たんじゃない」
怒りに任せておれは村人目掛けて、拳を振り下ろした。
「ひっっ!」
村人は思わず座り込み、目を閉じる――
パシッ
「!」
おれの拳が村人の顔面に当たる直前、少年の手がその腕を掴んだ。
「だめだよ」
「――」
あたりが水を打ったように静まりかえった。その中でそいつの凛とした声が静かに発せられる。
「暴力で、自分の意思を伝えようとするのは卑怯者のすることだ」
「――なに…」
おれは再び怒りで頭の中が沸騰した。
だが、そいつはそんな事は気にしない様子で、おれの腕を掴んでいた手を放した。
おれはそんな少年の平然とした態度が気に入らなかった。ふと気づくと、おれは村人を殴ろうとした拳をそのまま少年に向けていた。
少年は身を翻した。十分におれの拳をよけるだけの間はあった。が、そいつは決してその場から動こうとはしない。村人たちははっと息をのんだ。
そして、拳が少年の顔を殴ろうとしたその瞬間――
「ルリアッ!」
一人の少女が少年の前に飛び出してきたのだ。慌てて少年が少女を自分の前から退かそうとしたが間に合わない。
ドカッ――。
鈍い音がおれの耳に刻まれる。
少女の小さな身体は近くにあった大木に命中した。
「ルリア!」
少年がはっと我に返り、すぐさま少女の元へ駆け寄った。
おれはただただ呆然として、そこから一歩も動けないでいた。
少女は「大丈夫よ」というと、少し顔をしかめながらも自分の力で立ち上がり、そしてそんなおれの前へ歩み寄った。
「――気は済んだ?」
その澄んだ瞳はおれの瞳をじっと見つめる。
驚きの余り目を丸くしていたおれは、少女の言葉で我に返った。少女の殴られた頬は真っ赤にはれている。相当力を込めて殴ったはずだ。だのに、目の前の少女は涙一つこぼさない。それどころか、殴った自分に微笑んでさえいる。
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